ライム〜あの日の先へ

ライム

※※※


鈴子は目の前にそびえ立つ高層ビルを見上げた。

日が落ちても、うだるような暑さの東京。
夕闇のなか見上げる高いビルは、てっぺんが見えない。

「うわぁ、ママ、おっきいねぇ」

凛は、一生懸命顔を上げて上を見ている。

「ここなの?」

電車を乗り継いで一時間以上。途中電車に飽きて少々ご機嫌の悪かった凛も、目の前のビルに圧倒されていた。

「うん。行こう」

あの日、精一杯の勇気を出して受付で彼の名を告げ、会いたいと言った。だが、門前払いだった。
そんなことを思い出しながら、意を決して美しい受付嬢に話しかけた。

「すみません。望田、と申します。五嶋零次さんにお会いしたいのですがいらっしゃいますか?」

「五嶋と申しますと、当社代表取締役社長の五嶋、でございますか?」

受付嬢は口元に華やかな笑みを貼り付けたまま、鈴子の全身を一瞥してから尋ねる。

「はい」

ここまでの受付嬢の反応はあの時と同じだ。
だがこのあとの対応が違った。受付嬢がどこかへ電話をかけたのだ。

「まもなく担当の者が参ります。そちらで少々お待ち下さい」

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