ライム〜あの日の先へ
「鈴子」

零次が振り向いて鈴子に手を伸ばした。昔と変わらない優しい笑顔を浮かべている。その表情に鈴子は釘付けになった。

ーーそうだ。私は子供の時からいつも待っていたんだ。
背中を向けていた零次くんが振り向いて、私だけを見てくれて、私のことだけ考えてくれる、この瞬間を。

「私、零次くんの隣で生きていきたい。
両親の事件のことを知っている世間からすれば、私ではふさわしくないって言われるかもしれない。
だけど、私も強くなる。零次くんと一緒に生きていきたいから」

鈴子は零次の手を取った。
零次は凛と鈴子を二人いっぺんに抱き寄せてギュッと抱きしめてくれた。
その力強さとぬくもりに鈴子の心の緊張もみるみる解けていくようだった。
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