ライム〜あの日の先へ
「止まっていた時間が動き出した。
一成、君が愛する妹と姪っ子を俺に任せてくれ。一生かけて守ると誓う」

鈴子と凛を腕に抱きしめながら、零次は一成に宣言した。


「……そのセリフ、遅ぇよ」

一成は一言そうつぶやくと、水差しからグラスにライムジュースを注いだ。
グラスを零次と鈴子に手渡す。凛の分はグラスに見える透明なプラスチック製のカップだ。

「乾杯しよう。お前たち家族の新しい門出…」
「わーい、かんぱい!」

まさかの凛が乾杯の音頭をとり、自分のカップを零次、鈴子、一成のグラスに次々と合わせていく。プラスチックのカップは綺麗な音は鳴らないが、それでも大満足の様子でジュースを一気に飲み干してしまう。

「凛、まだ話している途中だろ?」
「いっせいくん、これおいしいよ!おかわり!おかしもたべる!おろして、パパ」

凛はあまりにあっさりと零次をパパと呼んだ。

呼ばれた零次も、聞いた鈴子も一成もあっけにとられる。
凛が零次をパパと受け入れるか心配して、これほどのシチュエーションを準備したというのに、凛には脱帽だ。
< 227 / 231 >

この作品をシェア

pagetop