ライム〜あの日の先へ
「すみません、おさわがせして。
零次、やめろって。親の勘って当たるんだ。本当に具合悪いんだろう。
山田先生、その子、救護に連れて行って上げてください。
鈴子は大丈夫だな?ヒザ擦りむいてるみたいだけど、走れるな?
汚れた体操服は気にするな。兄ちゃんがきれいに洗ってやるから。今日は運動会なんだ、目一杯汚しておいで」

零次をなだめるように話し出したのは一成だ。

こちらは誰がどう見ても優等生。アイロンがかかった薄いブルーのシャツに、ベージュのチノパン。まるでモデルのような体型、爽やかで整った顔の一成に、日菜の母が見惚れている。


そんな一成にすみませんと言われて、日菜の母も溜飲を下げたようだ。


「そ、そうだな。日菜ちゃんは先生と救護のテントに行こう。鈴子ちゃんは、どうだい?」
「わたしは、大丈夫です」


教師が日菜を連れ出す。その後を心配そうに日菜の母がついていく。


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