ライム〜あの日の先へ
昼食時。
多くの生徒がグラウンドの木陰でレジャーシートを敷いて、親たちとお弁当を食べる。
去年は、教室の窓から寂しく羨ましく眺めていた風景。今年はその中に自分がいる。そのことがたまらなくうれしかった。
「鈴子ちゃん、早かったなぁ、ダントツだった。かっこよかったよ」
鈴子は徒競走で一位になり、キラキラの一等賞シールを体操服の胸に貼っていた。
そのシールを指さして零次が大げさなほど褒めてくれる。恥ずかしく感じるくらいだ。
「さ、鈴子、いっぱい食べろ」
兄が風呂敷に包んでいたタッパーを開ける。
これでもかと詰められたおかずはどれも好きなものばかり。鈴子の目がキラキラと光る。
「うわぁすごい!唐揚げ!卵焼き!タコさんウインナー!
え、え、おにぎり、かわいい!女の子のお顔〜!すごい!すごい!」
「そのおにぎり、零次が作ってくれたんだ。海苔を切ってさ、ほんと器用だよな」
「小学生、女子、弁当って調べたら、オレにもできそうなネタがこれだった。思ったより上手くできてよかった」
「零次くん、ありがとう!おにい、ありがとう!いただきまーす」
唐揚げは油っぽく、卵焼きは少し焦げていた。それでも、三人で笑いながら食べるだけでとてつもなく美味しい。