ライム〜あの日の先へ
嫌がれば、金の話をされた。母は五嶋から莫大な金を受け取っていたのだ。五嶋を出るなら全て返せと言われた。
だが、その金は母の贅沢のために消えていた。
零次は自由と引き換えに、大学進学したようなものだった。

せめてもの抵抗で、ひとり暮らしをしながら生活費はアルバイトで懸命に稼いだ。
だが、半ば強制的に五嶋商事に就職することとなる。

五嶋の言いなりでやりたくないと思う反面、大規模なビジネスに関わり、営業として、人と人、企業と企業をつなぐ仕事にはやりがいを感じていた。
ただ、いずれ社長になるであろう御曹司にリスキーな仕事はさせられないと、安全な仕事ばかり回ってきた。今回のロサンゼルス支社への転勤も、そうだ。これまでいたニューヨーク支社でトラブルが発生したからと、零次はロサンゼルスに回されたのだ。御曹司に責任が振りかかることのないように。

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