ライム〜あの日の先へ
長い零次の身の上話を聞いて、一成も鈴子も何も言えなくなった。
あんなに一緒にいたのに、知らなかったことばかり。大学進学後の怒涛の日々も想像するだけで、辛い。今の零次は無理を強いられてがんじがらめになっている。

せめて、ここでは以前のように笑ってほしい。

あの頃のように。

鈴子は、悩んでやっと口火を切った。

「零次くん、ニューヨークは長かったの?」
「大学4年の時に留学してそのままニューヨークにいた。ロサンゼルスは3日前に来たばかりで、まだ、荷造りをほどいてもいないんだよ。鈴子ちゃんは?」
「おにいの転勤についてきて、わたしはこっちの学校に通ってるの。キャビンアテンダントになりたくて、勉強頑張ってる」
「へぇ、CAか。すごいなぁ。夢に向かって頑張ってるんだな。
ロサンゼルスのこともきっと色々詳しいね。今度、日本食の売ってるスーパーとか教えてくれるかな?それから、美味しいレストランとか」

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