ライム〜あの日の先へ
鈴子は雨に打たれながら、肩を落とす。

こんな惨めな姿を零次に見られた。恥ずかしいやら、情けないやらで、涙が溢れてくる。

「鈴子ちゃん、大丈夫かい?」
「助けてくれてありがと」

それだけ言うのが精一杯。なんとか取り繕うとするけど、雨でずぶ濡れの状態ではどうにもならない。
足はズキズキと痛むし、最悪だ。

すると、零次はそれ以上何も言わずに、そっと傘を差しかけてくれた。
鈴子に傘を傾けた分、零次の肩が濡れる。
鈴子はそっと傘を押し返した。

「私はもう濡れちゃってるから、傘、意味ない。零次くんが濡れちゃう」

「ついでだから、嫌なこと全部雨で流しちゃえよ」

「ありがと、零次くん。みっともないとこ見られちゃって恥ずかしい。
今日は、おにいが寄せ鍋作るって言ってた。早く帰ろ……っ痛」

うっかりひねった足をそのまま前に出してしまい、痛みが走る。

「鈴子ちゃん、足、痛い?この傘、持ってて」

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