ライム〜あの日の先へ
約束はすぐに実行された。
あの雨の日から数日後、一成の休みに合わせて三人で天文台にやってきた。


「零次、本当にこんなところに来たかったのか?」

周りは観光客とカップルだらけ。零次がなぜこんな観光地に来たがったのかわからず、一成は眉間にしわを寄せている。
あの雨の日のことは一成に心配させたくなくて内緒にしていた。

「うん。鈴子ちゃんにLAが一望できるって聞いて、来てみたかったんだ」

「休みって言ってもおにいはどうせ家でごろごろしてるんだし、たまには付き合ってよ」

「そういえば俺もここに来たのは初めてだ。へぇすごく眺めがいいな」

久しぶりの休みだというのに、鈴子につきあわされて渋々ついてきた一成も、眼下に広がる景色を見て感嘆の声をあげた。
鈴子にとってつまらなかったデートの記憶も、二人と一緒の楽しさで上書きされて忘れられそうだ。

「あっちの景色も見たい。行こ!」

< 63 / 231 >

この作品をシェア

pagetop