ライム〜あの日の先へ
「あ、ほら、あぶないよ」
はしゃぐ鈴子に零次が声をかけた。
「え?」
何が危ないのかとっさにわからずにいた鈴子の腕を、零次が掴んだ。
見れば足元には吐き捨てられたガムがあった。
今日は新しい靴だというのに、踏んで汚してしまうところだった。
「危うく、くっついて離れなくなるところだったな。まるで、birdlime(バードライム)だ」
「バードライム?ライムって、ジュースにするあれ?」
「俺も初めて聞いたときは、あの柑橘のライムを思いうかべたけど、この場合は鳥などを捕まえるためのもちのような粘着物のことなんだ。一度足を取られれば、逃れることはできない。もがくほどに体中絡み取られ、長時間にわたり苦しみ、じわじわと死に至る。残酷な駆除方法だ」
「へぇ、零次くん、色んなこと、知ってるんだね。
バードライムか。そんな残酷なやり方があるのね。
ガムも踏んだらなかなか取れないし」
捕らえられた動物を思い、恐怖を感じた。
「ありがとう、零次くん。危うく、惨事になるとこだった」
「鈴子ちゃん、もしかして足、痛い?」
実は一成や零次が楽しそうにしているから、鈴子は靴が合わずに足が痛むことを我慢していた。
そのことに気づいてくれた。そんな気遣いがうれしい。
「バレた?今日の靴新しいから履き慣れてなくて」
「なんだ、そうなのか?じゃあ、もう帰ろうか」
「そうだな、また来ればいいし」
「もうすぐ日が暮れるよ。世にも美しい夜景を見に来たんじゃない。私なら大丈夫」
強がりを言って二人を安心させようとした。
だが本音をいえば、足の痛みがひどくて今すぐにでも帰りたかった。
はしゃぐ鈴子に零次が声をかけた。
「え?」
何が危ないのかとっさにわからずにいた鈴子の腕を、零次が掴んだ。
見れば足元には吐き捨てられたガムがあった。
今日は新しい靴だというのに、踏んで汚してしまうところだった。
「危うく、くっついて離れなくなるところだったな。まるで、birdlime(バードライム)だ」
「バードライム?ライムって、ジュースにするあれ?」
「俺も初めて聞いたときは、あの柑橘のライムを思いうかべたけど、この場合は鳥などを捕まえるためのもちのような粘着物のことなんだ。一度足を取られれば、逃れることはできない。もがくほどに体中絡み取られ、長時間にわたり苦しみ、じわじわと死に至る。残酷な駆除方法だ」
「へぇ、零次くん、色んなこと、知ってるんだね。
バードライムか。そんな残酷なやり方があるのね。
ガムも踏んだらなかなか取れないし」
捕らえられた動物を思い、恐怖を感じた。
「ありがとう、零次くん。危うく、惨事になるとこだった」
「鈴子ちゃん、もしかして足、痛い?」
実は一成や零次が楽しそうにしているから、鈴子は靴が合わずに足が痛むことを我慢していた。
そのことに気づいてくれた。そんな気遣いがうれしい。
「バレた?今日の靴新しいから履き慣れてなくて」
「なんだ、そうなのか?じゃあ、もう帰ろうか」
「そうだな、また来ればいいし」
「もうすぐ日が暮れるよ。世にも美しい夜景を見に来たんじゃない。私なら大丈夫」
強がりを言って二人を安心させようとした。
だが本音をいえば、足の痛みがひどくて今すぐにでも帰りたかった。