ライム〜あの日の先へ
「で、もう一箇所は?どうせ、ホテルの最上階とかでしょ」

「ちがう。五嶋商事の本社ビルの最上階。社長室から、社長の背中越しに見た。
罵詈雑言を浴びながら、冷たく光る地上の明かりをぼんやり見てた。こんな暖かなオレンジ色じゃない。無機質な青白いLEDの光ばかりだった。心まで冷え切るような、絶望感しか感じない夜景だった」

零次の見せた表情は、苦渋に満ちていた。
きっと周囲は御曹司なんて苦労知らずの温室育ちなのだと思ってるに違いない。だが、零次は違う。
きっと鈴子の知らない苦労をたくさんしてきたのだろうと思う。

「零次。どんな罵詈雑言を浴びようとも、俺はお前がデキるやつだって知ってる。人知れず努力をしていることも知ってる。俺はどんなときでもお前の味方だよ」
「零次くん、いつか東京の夜景も見たいな。電波塔からの夜景も、五嶋商事からの夜景も一緒に見たい。
たとえ何があっても、私も絶対にあなたの味方だよ。負けないで。
大好きだよ、零次くん」

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