ライム〜あの日の先へ
居心地がいいからといっても、零次はどこまで行っても他人なのだ。とくに鈴子にはきちんと大人の女性として扱っていかなくては。

鈴子は昔よりも、笑ったり、拗ねたり、表情が豊かになった。両親の事件のせいで肩身の狭い思いをしていた日本を脱出できたのが確実に良い方向へむかったのだろう。

はっきりいって零次の好みのタイプ、直球だ。
出会い方が違っていれば手を出していたかもしれない。

だが。

今の零次の心の中には、一条琴羽がいる。
絵に描いたような名家一条家の御令嬢。
彼女こそが、理想とするハイスペックを兼ね備えたパーフェクトな女性。
周囲が零次に求めているのは、まさに彼女のような人物像だろう。

琴羽のようにならなければ。

いつも、もがいていた。
少しでも実績をつくりたくて焦っていた。




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