ライム〜あの日の先へ
「ねぇ、大学生のときってどうだったの?零次くんと一条琴羽さんって」

新聞で彼女の記事を目にしてから、鈴子は事あるごとに琴羽のことを聞きたがった。

鈴子が零次に好意を抱いていることは気づいていた。それは懐かしい兄の親友に出会えて、再び兄のように慕っているに過ぎないと思っている。
まだ淡い好意を成長させない為に、零次は鈴子に琴羽との思い出と零次の思いを伝えた。



「大学時代、俺は雑誌の読者モデルしてた女の子とつきあってて、琴羽はその子の友達だったんだ」

大学時代。琴羽は零次の恋人の友人に過ぎなかった。
勉強はダントツで首席だったが、見た目は地味で、モデルをしていた零次のカノジョの引き立て役のような存在。いつも静かに笑って楽しそうにしていた。
高校生の時に母親を亡くし、いつもバイトしていて苦学生なのだと思っていた。
だからこそ零次は当時のカノジョといつも気にかけていた。


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