ライム〜あの日の先へ

渋々と零次が仕事に行くと、鈴子は身支度を整えて一旦家に戻ることにした。この時間なら一成は会社に行っているはずだ。

相手は零次とはいえ男性の家に泊まったなんて、兄はきっと怒っている。しかも身一つで飛び出したのだ、心配させただろう。

「……ただいま」

恐る恐る玄関のドアを開けて、家の中へと足を踏み入れた。玄関に兄の靴を見つけてドキリとする。


ーーまさか、まだ会社に行っていない?
どんな顔をしたらいい?

恥ずかしいし、バツも悪い。
鈴子の心臓は痛いほどにドキドキしていた。



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