ライム〜あの日の先へ
多くの仕事をさせてもらっていたわけではないので、引き継ぎといっても大したことはなかった。
それより、逐一日本の状況を確認するほうが骨が折れた。

状況は最悪だ。これまでのずさんな経営が次々と露見する中、社長はだんまりを決め込んでいた。

全てを零次に背負わせ、逃げる算段だけはしているようだ。

ーーせめて、この一週間はもってくれ。
鈴子と過ごすこの一週間だけでいい。このキラキラした幸せな思い出があれば、きっとどんな試練にも耐えられる。

鈴子。
一途にただ愛情を向けてくれる。可愛くて、愛しい存在。
仕事中毒と化した零次が忘れていた恋愛感情というものを思い出させてくれた。

このまま、ロサンゼルスで鈴子と一緒にいたい。許されるならずっと一緒にいたい。鈴子の純真そのものの笑顔を一番近くで毎日見ていたい。

好きだ。
鈴子が、好きだ。だが、言葉には出来ない。
好きという言葉は、言霊となってお互いを縛ってしまう。鈴子には去っていく零次に気持ちを残してほしくない。
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