ライム〜あの日の先へ
琴羽への感情は、父の望む後継者の理想そのままの琴羽の存在に憧れているだけ。
一条琴羽を手に入れることができれば、五嶋家にも五嶋商事にも一矢報いることができる。今まで冷遇されていた零次の逆襲だ。
そんな打算が見え隠れしている。純粋な恋愛感情などそこに存在しない。

ーー最低だな、俺。

日本に帰ったらどんな手を使ってでも琴羽をこの手にする。五嶋商事を救うための切り札として琴羽に契約結婚を申し込むつもりだ。
まともな夫婦生活など望まない。損得勘定からなる単なる契約だけでいい。

だから、鈴子への恋情はこの一週間で燃やし尽くしてしまおう。
甘やかして、甘やかされて、抱き潰して。お互いの心に深くこの時間を刻もう。

これからの人生どこまで堕ちていったとしても、鈴子と過ごした時間は、幸せな思い出としてきっと自分を支えてくれる。

だから、残されたわずかな時間を鈴子のためだけに使いたい。

零次は早く仕事を切り上げるべく、机に向かった。


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