ライム〜あの日の先へ


ーー今、何時だろう。

窓に雨の粒が付いている。どうやら降り出したようだ。

昨夜日付が変わることにやっと帰ってきた零次は、優しく鈴子の体を抱き寄せてまだ寝ている。

規則正しい寝息。いつもはきれいに整えている前髪が、サラサラと額にかかっている。小さな顔。長いまつ毛。目元に小さなホクロを見つけた。いつもは気づかないほど小さなホクロが目尻にある。

高い鼻。薄い唇。

何一つ忘れるものか。
記憶に深く刻んでやる。

「観察は終わった?」

不意にまぶたが開く。大きな瞳が楽しそうに鈴子を写している。

「まだ。もっと見せて」
「俺だって鈴子を見たいのに」

鈴子は恥ずかしげに頬を染めた。
ちょっと甘いことをいうとすぐに赤くなるところがとてつもなく可愛い。

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