ライム〜あの日の先へ
鈴子が飲み物を受け取ると、零次は車を発進させた。

零次が選んだちょっとクラッシックな赤いスポーツカー。運転する零次の横顔はりりしい。

「有名観光地ばかりで、ロサンゼルスが長い鈴子には退屈だろう?人もたくさんいるし、疲れた?」

零次はどこへ行っても楽しんでいる。ぐずついた天気など物ともせず、鈴子と一緒に写真を撮り笑っていた。その笑顔があまりにまぶしくて、笑いかけられるたびにドキドキしてしまう。

笑い返そうとしても気持ちが追いつかない。

ーーだって。明日には彼は日本行きの飛行機に乗って行ってしまう。

寂しさが心を占領しようとしている。それをなんとか押し込んで楽しもうとしているのだが、どうしても隠し切れない。
だから、景色どころじゃなく少しでも多く零次の姿を目に焼き付けたくて。鈴子はひたすら零次を目で追っていた。

そのせいか、つまらないと思われてしまったのかもしれない。

< 93 / 231 >

この作品をシェア

pagetop