社長っ、このタクシーは譲れませんっ!



 その日の帰り、千景は会社を出たところで、後ろから声をかけられた。

「おい」

 振り返ると、将臣だった。

「社長、どうしたんですか?」
「帰るんだよ」

「何故ですか」

「いや、何故ですかってなんだ……。
 だが、確かに社長になってから、こんな早く帰れるのは初めてなんだ」
と将臣はウキウキしたように言う。

「まだ少し明るいな、小学生に戻った気分だ。
 そうだ、嵐山、寿司でもおごってやろうか」

 ……小学生は、寿司おごらないと思いますね。

「いえ、結構です」

「なんでだ」
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