社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「スペイン語のフィンと、日本語の(しゅう)からついた名前だ。

 どっちも終わりという意味の言葉だ。

 あの人も、滅多に家にいないのに猫増やしちゃ可哀想、とは思ってるらしいんだ。

 それで、ここで終わり、と思っては、フィンだのシュウだの名付けているようなんだが。

 ……結局、また拾って来るんだよな」
と言いながら、将臣は最初に見たリビングの扉を開けた。

「えっ? お母様、猫拾ってきてらっしゃるんですか?」

「そうなんだ。
 ああ見えて、捨て猫とか、ほっとけないタチみたいで」

 夕日で眩しいリビングの光に瞬きしながら、将臣は言う。

「そうなんですか。
 すごいペットショップの猫なのかと思ってました。

 みんな堂々としてて気品があるっていうか。
 綺麗な猫ばっかりなんで」
と千景は言って、

「……すごいペットショップってなんだ?」
と横目に見られて、言われてしまう。

 いや、なんかすごい動物とか売ってそうなペットショップですよ。

 孔雀とか、タランチュラとか、ヤンバルクイナとか、ハシビロコウとか……。

 あの猫たちが、なんか高そうな猫、に見えたのは、単に。

 思い込みと、場所が豪華なのと、お手入れがいいから、だったのだろう。
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