社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 まだ、白と黒とグレーの三匹しか見てないのにっ。

 五匹いるんだよね?

 あとは三毛とかかなあ。

 もう一匹は何色だろう、と千景が妄想しながら、ふふふふ、と笑ったとき。

 開いたままのリビングの扉から、スリムな白猫が入ってきた。

 戻ってきてくれたっ、と喜んだが、何故か、別の扉からも同じ白猫が入ってくる。

 右からも左からも白い猫。

 白、黒、グレー、白。

 千景は鏡が真ん中にあるかのように、並んで立つ、そっくりな二匹を見ながら、思わず叫んでしまっていた。

「この二匹、色、かぶっちゃってるじゃないですかっ」

「……いや、かぶっちゃいけないのか」


< 122 / 477 >

この作品をシェア

pagetop