社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 


 個室なこともあり、千景は将臣とゆっくり話せた。

 百歳を越えたひいおばあちゃんが四十肩かも、と言っている話や。

 この間、宅急便で『たからばこ』が届いたと思ったら、『たらばがに』だった話など。

 帰り際、将臣が言う。

「俺もまだ社長になって日が浅く、この会社のこともよくわからない。
 だからこそ、社史には期待しているぞ」

「はい」

「いろいろ不満もあるだろうが。
 新人、頑張ってくれ」

「ありがとうございます。
 でも、不満などありません。

 この会社は福利厚生も素晴らしいですし」

「ああ、なにか利用したか?」

 ジムや温泉宿のことだと将臣は思ったようだった。
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