社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「他の部署と兼ねてる人がいるとか聞いたんで、それで見ないだけですかね?」
と言ったあとで、千景は笑って言った。

「いや~、社史編纂室海外支部とかあるのかと思いましたよ~」

「うちの会社、どんだけ社史に力入れてんだ。
 海外行って、なにすんだ」
と将臣が言ったとき、ちょうどカレーとオムライスがやってきた。

 程よく辛いカレーを食べていたとき、千景がふと思い出したように表情を曇らせ言ってきた。

「九条真実さんのことなんですが」

「またくだらない話で盛り上がってんのか」

「……あの、社長、真実さんのこと好きですか?」

 思い詰めたような顔で千景は訊いてくる。

 ……何故、そんなことを訊いてくる。
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