社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「ほ、ほんとうにその子はフィンなんですかっ?」
強大な力を前にした魔王を前に抗おうとするモブな村人のように、千景は叫ぶ。
将臣は無言でスマホを出すと、片手で器用にビデオ通話をかけた。
「なんなの? 将臣。
珍しいわね」
とこんな時間でも化粧の乱れひとつなく美しい早百合の顔が映し出される。
「今、安美と一緒なのよ」
将臣が舌打ちして言う。
「やっぱり仲直りしてるじゃないか」
九条真実の叔母、安美との仲違いが、早百合が真実との結婚に反対している理由のひとつのようだったのに、あっさり仲直りしてしまったようだ。
「ちょっと千景と話してくれ。
訊きたいことがあるそうだ」
ほれ、と何の心構えもなく、スマホを向けられた千景は慌てて、与太郎を将臣から受け取る。
スマホに向かって突き出した。
「早百合さん、夜分遅く、すみませんっ。
あのっ。
この与太郎はフィンですかっ?」
「……与太郎ってなに?」
と不思議そうに早百合に言われ、後ろの安美に爆笑されてしまった。
強大な力を前にした魔王を前に抗おうとするモブな村人のように、千景は叫ぶ。
将臣は無言でスマホを出すと、片手で器用にビデオ通話をかけた。
「なんなの? 将臣。
珍しいわね」
とこんな時間でも化粧の乱れひとつなく美しい早百合の顔が映し出される。
「今、安美と一緒なのよ」
将臣が舌打ちして言う。
「やっぱり仲直りしてるじゃないか」
九条真実の叔母、安美との仲違いが、早百合が真実との結婚に反対している理由のひとつのようだったのに、あっさり仲直りしてしまったようだ。
「ちょっと千景と話してくれ。
訊きたいことがあるそうだ」
ほれ、と何の心構えもなく、スマホを向けられた千景は慌てて、与太郎を将臣から受け取る。
スマホに向かって突き出した。
「早百合さん、夜分遅く、すみませんっ。
あのっ。
この与太郎はフィンですかっ?」
「……与太郎ってなに?」
と不思議そうに早百合に言われ、後ろの安美に爆笑されてしまった。