社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
あんな立派な許嫁……
いや、真実さん、八十島さんが好きみたいなんだが――、
あんな立派な許嫁がいるのに、自分になど興味ないだろうし。
そもそも、自分なんて相手にするわけないと思っていたからだった。
もてあそばれるのは嫌だし。
ちょうどいいからと形だけの妻になるのも嫌だ。
千景はジリジリと後退し、将臣はジリジリと前へ出る。
「……心配するな、大丈夫だ。
部屋に上がったって、なにもしない。
お前の仏を見て、静かに帰る。
お前に嫌われたいわけじゃないからな」
千景を追い詰めながらも、そんな殊勝なことを将臣は言ってきた。
いや、真実さん、八十島さんが好きみたいなんだが――、
あんな立派な許嫁がいるのに、自分になど興味ないだろうし。
そもそも、自分なんて相手にするわけないと思っていたからだった。
もてあそばれるのは嫌だし。
ちょうどいいからと形だけの妻になるのも嫌だ。
千景はジリジリと後退し、将臣はジリジリと前へ出る。
「……心配するな、大丈夫だ。
部屋に上がったって、なにもしない。
お前の仏を見て、静かに帰る。
お前に嫌われたいわけじゃないからな」
千景を追い詰めながらも、そんな殊勝なことを将臣は言ってきた。