社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 


「ともかく、上げてくれないのなら、俺たちの友情もここまでだな」
と言う将臣に、

 いや、あなた自分で友情って言っちゃってますよ、
と思いながら、千景は将臣を部屋に上げた。

「ほう、これがお前の部屋か。
 予想より可愛らしいな」

 あなたの予想がどんなのだったか、気になりますが……。

 結構殺風景な部屋を見回し、千景は思う。

「これが仏です」
と今まで描いた写仏を見せると、将臣は驚いていた。

「お前、こんな緻密で繊細な作業ができたのかっ。
 仕事もちゃんとしろっ」
と何故か怒られる。

 いや、ちゃんとやってますよ、仕事は。

 普段のイメージで怒らないでくださいよ……と思っていると、将臣が、
「あと少しだな、この冊子」
 描くところが見てみたい、と言い出した。
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