社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「じゃあ、お前、それだけ仏描いてるのに、なにを考えて描いてるんだ?」
えっ? と思った千景は思い返すような顔をして言った。
「……可愛い猫。
快適なタクシー通勤。
気のいいドライバーさんと会社に着くまで過ごす、ほっと一息な時間と空間。
懐かしい喫茶店。
美味しい定食。
可愛い猫。
美味しい寿司。
気のいい大将。
可愛い猫。
益岡さんの淹れてくれた紅茶。
前社長の謎で幻なチーズケーキ……」
「……全部さっき俺が言ったことじゃないか。
せめて、オリジナリティを出せっ。
っていうか、俺をちょっとでも入れろっ」
そう将臣に怒られたのだった。