社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「仏を描いている千景の側で和蝋燭の灯りが揺れてて、命のともしびかと思った」
と今、横で将臣が語っている。
正面に座る八十島たちは何故か渋い顔をしてそれを聞いていた。
実は、二人は、
こいつ、ついに部屋に上がりやがったか、と思っていたのだが、千景にはそんなことは伝わらなかった。
っていうか、暗い部屋で二人きりになったのに、いい雰囲気にならなかったのか、と思っていることも伝わらなかった。
そして、
似た二人だから、いい雰囲気にならなかったんじゃないのか。
嵐山と真逆の性格の俺ならいい雰囲気に持ち込めるかも、と二人が思っていることも伝わってはいなかった。