社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 きょう、ひまだったら
 しょくじにでも

 頭の中で何故かすべてが平仮名になる。

 子どもが絵本を声に出して読む感じで言いそうになり。

 いやいや、もっと大人っぽくっ、と思いながら、なんとか、掠れた声を絞り出した。

「ほ……」

 ほ? と千景がこちらを見る。

「ほ、本日」

 おひまだったら……

「おひ……」

 ホンジツ オヒ……?
と千景が小首をかしげる。

「ほ、本日

 ……は、お日柄もよくっ。

 そうっ。
 お日柄っ、いいらしいなっ」

「は?」

 さっきまで、挨拶文のデータをまとめていたので、それがそのまま口から出てしまったようだ。

「今日もお日柄がいいんですか?
 そういえば、この間、一粒万倍日にお財布買ったんですけど。

 全然、お金貯まらないんですよね~」
と千景は、そこから、まったく違う話をはじめてしまった。



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