社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 うーん、と武者小路は唸る。

「まあ、気が合わないこともない。
 顔も好みでないこともない。

 向こうからグイグイ来てくれるので、こっちがいろいろ考えなくていい。

 ……そもそも、俺は肉食系じゃないからな。
 意外と相性いいのかもしれないな」
と冷静に分析したあとで、走っているわりに痩せていないその身体で、のしのし歩いていってしまう。

 ありがとう。
 幸せに、武者小路――。

 ところで、二人とも、最後は『菓子で釣る』になったのが気になるんだが……。

 まあ、千景だから、それが正解なんだろうなと将臣は思っていた。



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