社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
その日、将臣は駄菓子となかなか手に入らないスイーツを用意した。
必ず千景が釣れるようにだ。
なかなか手に入らないスイーツの方は、坂巻に頼んで、武者小路が手に入れてくれていた。
八十島が言う。
「今日は早く帰れるよう、調整しておきました。
また、嵐山の方も残業にならないよう、前倉さんに頼んでおきました」
そこで、八十島は渋い顔をする。
「……でもこれで上手くいってしまったら、私は嵐山を嵐山様と呼ばねばならないのでしょうか」
社長夫人になるわけですからね、と言う八十島に、
いや、それを言うなら、千景様だろうよ。
なんで俺と結婚しても、旧姓の名字で呼んでいる、と思った。
入社したばかりの千景には、旧姓のままいたいほどの仕事のキャリアはまだないだろうし。
いやまあ、どっちでもいいんだが。