社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「そうじゃない。
 ただ、俺が今、言いたかったんだ。

 もうちょっとあとで言おうと思っていた。
 そのために、みんなも協力してくれていた」

 いつの間にか集まっていたみんなも後ろで、うんうん、と頷いている。

「お前にプロポーズするのに、みんな、いろいろと知恵も授けてくれた。
 全員、最後には菓子で釣れと言ってきたので、菓子も持ってきた」
と将臣は菓子を渡してくる。

「せっかくみんながいろいろセッティングしてくれたのに、段取りを狂わせてしまって申し訳ない」

 でも、止まらなかったんだ、と将臣は言う。
 
「今、しゃがんで猫と遊んでいたお前が俺を見て笑ったとき、心底思った。

 お前が好きだ。

 今、好きだ。
 大好きだ。

 今、お前に言いたい。
 千景、俺は一生、お前といたい。

 遅刻しなくても、猫の世話がなくても。
 毎朝、お前と出勤したい。

 俺と――
 結婚してくれ。

 お前が俺より、猫や仏やキャベツを愛していてもいい」

 猫に靴先をカリカリやられながら、千景は、何故今、キャベツ……と思っていた。

 将臣は黙って自分の言葉を待っている。
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