社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「あの、ほんとにそういうこと、よくわからないんですけど。
 でも……」

 とりあえず、今、思っていることをすべて言おう、と思いながら、千景は言った。

「私も社長とずっと一緒にいたいです。

 社長のこと……
 ゆっくり好きになってもいいですか?」

「千景……」

 将臣は感激したように言葉をつまらせたあとで言う。

「なんでここで告白してしまったんだろうな。
 こんなところで告白したら、抱き締めることもできないじゃないか」

 そういえば、他の社員たちも、なんだなんだ、と足を止めて見ている。

 そのとき、ビルの前のロータリーに巨大なタクシーが入ってきた。

 いつものタクシーの配色なのだが、なんか長いし、デカい。

 どうやら、ロールスロイスをタクシーと同じ色に塗っているようだった。

 ドアを開け、あの運転手さんが降りてくる。

「どうぞ」
と微笑み、後部座席のドアを開けてくれた。
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