社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「玉の輿に乗ったからって調子乗ってんじゃないわよっ」

「……あの、何処でもこの扱いなので、何処でも調子に乗れてないんですけど」

 いたたた、と言いながら、千景は思う。

 戸塚と呼ぶのは落ち着かない、とみんなに言われ、やはり、社内では『嵐山千景』で通すことにしたのだが。

 よかったのか悪かったのか。

 ずっと以前のまま、みんなに舐められている。

「今日、ランチ付き合いなさいよ。
 あんた、最近、呑み会とか付き合わないから」

「だって、社長、結構早く帰ってくるんで……」
と言いかけて、

「なにラブラブなとこ見せつけてんのよ、新婚っ」
とまた耳を思い切り引っ張られた。

「いててて……」




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