社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「あの人は高い店でしか買わないから絶対気づかないと思ってさ」
と弘高が早百合のことを言ったとき、
「知っていましたよ、あの商店街のケーキだって」
と背後から声がした。
一応、控えめなドレスにしているようだが。
明らかに花嫁より妖艶で美しい早百合がまとっているドレスと似た形の細身のグラスを手に言う。
「でも、あなたのことだから、そんな子どもっぽいことを考えているのだろうと思って、言わなかったのよ」
早百合と弘高は大学時代の同級生ということだった。
「気位の高い女神様みたいな人でしたよ、当時から」
しみじみと弘高が学生時代の早百合を語る。
「それが何故、兄貴と――
うちの家が修羅になると思っ……」
余計なことを言いかけた弘高は、
「あ、前倉さん」
と今、そっちに前倉さん、いましたっけ? という方角に向かい、手を上げ、何処かに行ってしまった。
と弘高が早百合のことを言ったとき、
「知っていましたよ、あの商店街のケーキだって」
と背後から声がした。
一応、控えめなドレスにしているようだが。
明らかに花嫁より妖艶で美しい早百合がまとっているドレスと似た形の細身のグラスを手に言う。
「でも、あなたのことだから、そんな子どもっぽいことを考えているのだろうと思って、言わなかったのよ」
早百合と弘高は大学時代の同級生ということだった。
「気位の高い女神様みたいな人でしたよ、当時から」
しみじみと弘高が学生時代の早百合を語る。
「それが何故、兄貴と――
うちの家が修羅になると思っ……」
余計なことを言いかけた弘高は、
「あ、前倉さん」
と今、そっちに前倉さん、いましたっけ? という方角に向かい、手を上げ、何処かに行ってしまった。