社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「親兄弟でもない相手と、誰よりも長く人生を共にすることが――」

 そう言いながら、将臣はそっとシーツの上で千景の手を探るようにしてつかんできた。

「ずっと一緒にいような」
「……はい」

「倒れていった者たちのためにも」

 ……誰がなににより、倒れていったんですか。

 そして、それを倒したのは誰なんですか。

 将臣は身を引いた八十島たちのことを言っていたのだが、もちろん、千景には通じなかった。

「しかし、今まで結婚式なんて、退屈な行事だと思ってたが。
 いいもんだな」

「そうですね。
 きっと、八十島さんたちの結婚式も、武者小路さんたちの結婚式も楽しいですよ」

「……あの二人、どう考えても、逃げられそうにないからな」

 八十島は真実の言動が不安すぎて、目が離せなくなっているし。
 武者小路は坂巻に檻に入れられ、鎖でつながれそうになっている。

 それでいて、二人とも、なんだかちょっと幸せそうだ。

 彼らの幸せな未来を思い、千景が笑うと、将臣が頬に触れ、キスしてくる――。




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