たとえ、この恋が罪だとしても
「わたしもね、若いころ、とてもとても好きな人がいたの。でも戦争があったでしょう? 結局その人と添うことはできなかった。あなたとお話ししていたら、ひさしぶりに思いだしちゃったわ、彼のこと」

 待子さんは少しはにかんだ笑みを浮かべた。

「あっ、そうそう、でもね。あなたはあのハンサムさんを好きになったことを悪いと思っているようだけど、ちっとも悪いことじゃありませんよ。人と人が出会うことは、それだけで素敵なことだし、まして心から好きと思える相手に出会えることは本当に奇跡的な出来事なのだから」

 あなたは悪くない――

 その言葉が今のわたしにとって、どれほど慰めになったことか。言葉では表しようがないほどだった。
< 105 / 182 >

この作品をシェア

pagetop