たとえ、この恋が罪だとしても
 わたしは思わず紗加さんのほうを見た。
 でも相変わらず眉ひとつ動かさずに余裕の表情を浮かべている。

 恋人のことをこんな風に言われて何も思わないのだろうか。

「あんなやつより、おれはどう? おれのほうがこの業界長いし、コネも多いよ」

 そう言って、さも下心のありそうな視線で見つめてくる。

 きっと場慣れしたモデルさんなら、冗談のひとつでも言って、うまくかわすのだろう。

 でも、そんな器用な真似ができないわたしは、なんと返答していいかわからず、困ってしまった。

 「そっちこそ、撮影まえにモデルくどくなよ」

 安西さんだった。
 ぶっきらぼうにそう言い放った。

「忠告してあげたんじゃない、この甘いマスクに騙されるなよって。しかし、よくこんな上玉、いままで隠してたな。もっと早く紹介してくれればよかったのに」

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