たとえ、この恋が罪だとしても
「OK。じゃあ、衣装チェンジして」

 安西さんの言葉を聞くやいなや、衣装さんとメイクさんがさっと動き出し、控室につくとあっという間に次の衣装の準備が整う。

 これぞプロの仕事なのだろう。
 その手際の良さには本当に舌を巻く。

 12時を回ったころ、お昼休憩になった。

 仕出し弁当が配られたが、食欲がなくほとんど手をつけられなかった。

 ひとりでお茶を飲みながら、ぼんやり外をながめていると、安西さんと酒井さんが庭のほうから歩いてきて、隣の部屋に入っていった。

 わたしから見える位置の椅子に安西さんが腰を下ろした。
 パソコンにアップロードされた写真の確認をしているようだ。

 くわえ煙草で、厳しい表情で撮影した写真をチェックする安西さん。

 こんなに真剣な表情をしている彼を見るのははじめてだ。
 目が離せない。

 今だけではない。これまで知らなかった彼の姿を、今日はたくさん見ることができた。

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