たとえ、この恋が罪だとしても
 疲れがピークだったのもたしかだし、ふだんから騒がしい場所が苦手なわたしには、とてもありがたい申し出だった。

 玄関へ向かって歩いていくと、酒井さんがわたしたちを見つけて近づいてきた。

「えっ、文乃ちゃん、帰っちゃうの?」

「具合悪そうなんで送ってく」安西さんはそっけなく、そう返した。

「そんなこと言って、やっぱりお持ち帰りってわけ? 懲りないね、おたくも」

「やっぱり」の部分を強調して、口の端に笑いを浮かべている酒井さんを無視して、安西さんはわたしの背に手をあてて外に出るように促した。
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