たとえ、この恋が罪だとしても
 渋滞にかかることもなく、1時間ほどでわたしのアパートに到着した。

 「着いたよ」

 そう言った安西さんの声にいつもの軽い調子は影をひそめ、それどころかこわばっているように聞こえた。

 どうしたのだろうかと思いながらもわたしは別れの言葉を口にしていた。

「ありがとうございました。今日はお疲れ様でした」

 言いたいのはそんなことじゃない。
 けれど喉元まで出かかっているそれらを、わたしは必死で飲みこんだ。

 ぐずぐずと車に乗っていれば口から飛びだしてしまいそうだった。

 あなたが……誰よりも好きです。
 もっと、そばにいたい……

 思いを吹っ切るように、ドアの取っ手に手をかけた。

< 125 / 182 >

この作品をシェア

pagetop