たとえ、この恋が罪だとしても
 安西さんに会ってからのわたしは、ずっと目隠しをして崖っぷちを歩いているようなものだった。


 堕ちてしまえばもう二度と後戻りはできない。

 俊一さんと紗加さんの顔が何度も脳裏をよぎる。

 ふたりに顔向けできないことをするつもりなの。

 もうひとりのわたしがさらに追い打ちをかける。

 でも、口から飛びだした言葉は、とうてい抑えきれない本心だった。

「わたしも……同じです。安西さんと離れたくない」
「あやの……」

 わたしの答えを聞いて、安西さんはわたしのほうに向いた。

「好きで、好きでずっと苦しかった。なんども諦めようとしたけど無理でした。あの日の紗加さんと安西さんを見たときには、嫉妬で身も心も焼き尽くされてしまいそうで、つらくて……」

 彼の、黒曜石のように美しい瞳が大きく見開かれた。
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