たとえ、この恋が罪だとしても
 関節が白くなるほどこぶしを握っているのも見える。 
 わたしの理不尽な言葉に必死で耐えているのがわかる。 

 俊一さんの苦痛が伝わってくるだけに、いたたまれない気持ちになる。

 その気持ちを押して、わたしは包み隠さずにすべてを話した。

 婚約してすぐ、安西さんに出会って好きになってしまったこと。
 何度も思いなおそうとしたけど無理だったこと。
 彼の写真のモデルをしたこと。
 そして昨日、彼と一夜を共にしたこと。
 彼とはもう二度と会うつもりはないこと。

 そして……

 結婚の約束を白紙に戻してほしいことを。

 正直に話すことはただの自己満足なのかもしれない。
 でも、自分の気持ちに嘘をつくことは、もうできなかった。

 
「謝ってすむようなことじゃないってわかってる。でも、ごめん……なさい」

 俊一さんは最後までわたしの話を聞いてくれた。
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