たとえ、この恋が罪だとしても
 それだけでありがたかった。
 ここに来るまでは、話なんか聞いてくれないだろうと覚悟していた。

 殴られても何をされても仕方がないと……。
 
 「本当にごめんなさい」
 
 わたしは、下を向いたまま壊れたオルゴールみたいにそう繰りかえした。
 彼は黙ったままゆっくり立ちあがると、わたしの前に坐った。
 
 殴られる、そう思っておもわず身構えた。

 けれど、彼はわたしの手を取った。
 あの日、プロポーズされたときと同じように、そっと優しく握ってくる。
 
 どうして……?
 
 意外な反応に思わず顔を上げると、俊一さんはわたしの顔を見つめて、それから口を開いた。

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