たとえ、この恋が罪だとしても
「文乃……」
 顔をあげると、わたしの頬に彼の手が触れた。

 両手で包み込むように。
 息がかかる距離まで、彼の顔が近づいてきた。

 キスされる。

 そう思った瞬間、わたしは反射的に顔をそむけた。

 俊一さんの顔がにわかに歪んだ。
 そしてわたしの腕を痣がつくほど強く握った。

「なんなんだよ! 文乃、教えてくれ! 言えよ! おれが嫌いになったんだったら、そうならそうと、はっきり言えよ!!」

「ち、違う。嫌いになったんじゃ……」
 激しく乱暴に揺さぶられた。
 
 そのはずみでわたしのセーターがはだけた。
 そして、鎖骨の下あたりにつけられた昨日の情事の痕跡が露わになった。

 彼の視線はその一点に集中した。

 人差し指でスローモーションのようにゆっくりとその痕をなぞり……
 
「……畜生」
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