たとえ、この恋が罪だとしても
 彼の目に凶暴な光が宿った。
 わたしの首に手がかかる。

 そのまま後ろに押し倒され、のしかかられる。

 彼は体重をかけ、力任せに締めあげてきた。

 頭ががんがんして、周囲の音が聞こえなくなってくる。

 霧が濃くなっていくように、目の前の彼の顔をかすんでいく。

 何をされようが、一切抵抗はしないと覚悟していた。

 それは本当だった。
 あれほど優しかった彼に修羅の苦しみを与えたのは、他ならぬ自分なのだから。

 罰を受けるのは当然の報いだと……

 ただ息ができないのは想像以上に苦しかった。
 生存本能が働いて、無意識に足をばたつかせた。

 その片足が俊一さんの身体のどこかを強く蹴った。

「うっ……!」

 その瞬間、首にかかっていた圧力は弱まり、一気に、肺に空気が流れこんできた。
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