たとえ、この恋が罪だとしても
「げほっ、げほっ」
 むせるわたしを乱暴に突き放すと、俊一さんは言った。

「出てけよ」

 それからコートとカバンを投げつけた。
「……出てってくれ……。これ以上、一緒にいたら本当に、本当に何をしてしまうかわからない……。そんなこと、したくない……したくないんだよ」

 そうして、後ろを向き、肩を震わせた。
 嗚咽が聞こえた。
 
 ごめんなさい、もう一度つぶやくと、わたしは彼の部屋を後にした。

 心に無数の針を突き立てられているようだ。

 人に傷つけられるより、傷つけるほうが何倍も苦しい。

 そして、身体の痛みより心の痛みのほうが何倍もつらい。

 そのことを嫌というほど思い知った。

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