たとえ、この恋が罪だとしても
 でも、たとえ代償がこの耐えがたい痛みだったとしても、安西さんと出会い、心と身体を通わせたことはわたしにとって、絶対に必要なことだった。
 
 後悔していない。
 ものすごく自分勝手な言い分だとわかっている。
 けれど、安西さんと出会わなければ、わたしは人を愛することの本当の意味を知ることはなかった。

 これまで、ひとを傷つけてまで、何かを得たいと思ったことは一度もなかった。

 後にも先にも、そんなふうに情熱を注げるのは安西さん、ただひとり。

 それほど、かけがえのない人。
 でも、もう二度と安西さんに会わない。

 昨日、安西さんとはじめて口づけを交わしたときから固く決心していた。
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