たとえ、この恋が罪だとしても
「うわっ、何だよ」
 急に腕をぐいっと掴まれて起こされた。

「もう、着陸態勢に入ってますよ」
「あ、ああ」
 ねむってたのか。おれ。

 まだ寝ぼけた頭のまま、シートベルトはどこだと横を向いて探っていると、アシスタントがにやにやしてこっちを見てる。

「何? なんか、顔についてる?」
 そう聞くと、
「いや、誰っすか、『あやの』って。寝言でうるさいほど言ってましたけど」

「おれの最愛の人」
 臆面もなくそう言うと、アシスタントはやってられないという感じで肩をすくめた。

 入国ゲートを出ると、まっさきに携帯の電源を入れ、文乃に電話をした。

 つながらない。

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