たとえ、この恋が罪だとしても
 無機質な機械の声が〝電波の届かないところにいるか、電源が入っていないのでかかりません〟と冷たく繰りかえすだけ。

「くそっ。なんだよ。なんで繋がらないんだ」
 業を煮やして、空港からそのまま文乃のアパートまで車を飛ばした。

 着いたころにはもう日が落ちて薄暗くなっていた。

 通路の蛍光灯が切れかかっていて、侘しさを辺りにまき散らしている。
 
 文乃の部屋に明かりは灯っていなかった。

 何度呼び鈴を押しても、ドアの向こうはしんと静まり返って、ひとの気配がない。

 いったいどこにいるんだ。

 あの夜。たしかにふたりの心と身体は通じ合っていた。
 生まれて初めて経験する恍惚にふたりで溺れた。
 もう離れられないって思ってたのに。
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